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あたしが娼婦として生き始めたきっかけなんて。
すごくちっぽけな事だった様に思う。
人より先に大人になりたくてあがいてた高校時代。
何をするにもお金が必要で…
「ねぇねぇこれ、かけてみない⁉」
カナが持ってきたのは。
街でよく見かけるテレクラのティッシュだった。
紙質のよくなぃ安っぽいデザインのティッシュ。
それが…その時のあたしには輝いて見えた。
「カラオケだけとかでもお金くれるらしぃよ⁉」
…言いながら。
カナのそれ以上を期待している目。
一人なら躊躇する事も二人なら怖くない。
そんな馬鹿げた集団心理に押されて…
二人できゃあきゃあ言いながら決めた偽名。
「キリ17歳」
カナは駅の反対口で待ち合わせて、後で報告する事を約束して別れた。
目印は丸めて持った情報雑誌。
会ってみたその人は意外な程普通の人で、今はもう照れ臭そうに笑っていた表情しか覚えていない。
彼氏ではない男に抱かれる。
思ったよりも嫌悪感もなくて…
相手が誰でもやる事は一緒。
バカみたいに冷静な自分とその上で必死に腰を振る男。
そのギャップが可笑しくて…
少し笑いを噛み潰しながら白い天井を男の肩越しに見つめてた。
「玩具になった自分」
この日が…あたしにおねだんがついた最初の日だった。
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