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「ったく。同志じゃないってのに」
「竹屋まで離れて歩いて頂けます?」
「同志じゃねぇって言ってんだろ!!」
姫が無表情で俺から3メートルほど距離を開ける。
「ちょっ、姫」
「それではお待ちしておりますわ」
そう言うと尋常じゃない速度で遠ざかって行く。
「なんで早歩きでそんな速いんだよ!」
「淑女のたしなみですわ」
「世の中に高速移動する淑女は溢れてねぇよ!」
「あら? 見掛け通り無知ですわね」
「見掛けによらずとせめて言おうぜ!? っていうか高速移動は常識じゃないだろ! ってかもういねぇ!?」
俺と会話しながらも高速早歩きで歩いていた姫は、すでに廊下の先へと消えていた。
俺、朝の千夏みたい。
「千夏・・・寂しかったんだな」
今後は放置プレイを控えることにしよう。
『人のふり見て我がふり直せ』
素晴らしい格言だ。
「あ、でもお兄ちゃん? あれはあれでゾクゾクしたよ?」
早速放置したかった。
「・・・ふっ、だからお前は勝手に対象年齢を引き上げるな!!」
しかし、優しい俺はスルーすることを選ばず渾身の空手チョップを打ち込んだ。
「おにい・・・ちゃん・・・」
意識が遠くに飛んで行きながらも、千夏の顔には満足げな表情が浮かんでいた。
終
ちなみに千夏を葬った後の俺はというと、急いで姫を追いかけた。
牛丼屋の前で待つ姫に、
「ごめん、遅くなって」
と、定番のセリフ。
「死罪ですわ」
と、見事に定番をぶち破ってくれたのであった。
「牛丼汁だく生卵大盛でお願いしますわ」
「前回より百円アップ!?」
「死罪よりマシでしょう?」
「ごもっともで」
実はそんなことよりも姫が大盛りを食べきれるかが気になった。
が、いざ食べ始めると始終幸せそうに牛丼を食されていらっしゃいました。
「俺より速い!?」
「情けないですわ」
牛丼一杯で散々な言われようである。
「あら?」
「ん?」
ひょいっ・・・ぱくっ。
「姫!?」
「お弁当が付いてましてよ」
平然と言う姫が取った行動とは・・・
ご想像の通り、俺の口元についていたご飯粒を取って食べたのである。
「その・・・あり・・・がと」
って感謝するとこなのか!?
「か、感謝されることじゃありませんわ」
うってかわって照れる姫は、かなり可愛かった。
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