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拓也が中学2年になるころには父親は仕事に全く行かず、拓也への暴力は日に日に増していった。拓也の体はもう限界だった。顔には無数のあざ、体には煙草の根性焼きのあと。
殺したい。殺したい。
こいつさえ死んだら俺は自由だ。暴力だってなくなる。
殺したい。
このころから俺は父親を殺したいと思い始めていた。でも……俺にそんなことができるはずがない。これからもずっとこの人の暴力に耐えながら生きていくしかない。
「ねぇ、たくちゃん。たくちゃんは好きな人とかいないの?」
「なんだよいきなり!」
俺はドキッとした。俺は真央が好きなんだ。小学校の時からずっと。
「私はいるわよ」
「へぇ、だから?」
俺は平然を装って答えた。
「嫉妬しないの?」
「は? ばかじゃねぇの! なんで俺がお前に嫉妬しなきゃならないんだよ」
俺は必死に否定した。でも真央には好きな人がいるのか……。
「もう帰ろうよ。私、おばあちゃんに怒られる」
もっと一緒にいたかったのにな……。
「う……うん。そうだな。そろそろ帰るか」
俺はそういって腰を上げた。
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