第八章~さよなら、最愛の人~

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「真央さん。最後は笑顔だった気がします」 看護婦のこの言葉に拓也は声をだして泣いた。 手紙が入っていた封筒の中には他にも入っていた。 カセットテープだ。拓也はすぐにカセットテープを聴いた。 『たくちゃん。たぶん泣いてるでしょ?』 真央の笑い声。 『あ、図星だ!』 「なんでお前は笑ってるんだよ…」 拓也はカセットテープに向かって言った。 『私ね、大人になったらたくちゃんと二人暮らししたかったな。私は今よりずっとずっと料理が上手くてたくちゃんが毎日仕事から帰るの料理を作って待ってるの』 「…」 『でも、もう無理だなぁ』 『ねぇ、前に神様の話をしたの覚えてる?』 「試練か…」 『神様はね。いつもそらの上で見守ってくれているんだよ。 私はそう信じている。 でもね、神様は時に試練も与えるの。 辛いとき、苦しいときどう乗りきるのか神様はいつも見ている。その苦しみを乗りきった時に初めて神様は喜びをくれるの。 私はだから、こんなの苦しくない。神様がくれた試練だから。もし、私がこの試練に負けたら天国で神様は喜びを与えてくれる。 だから、悲しまないで…』
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