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「ああ……金曜の体育の時になくしたんだよ」
そこそこ気に入ってたんだけど、と竜は不機嫌そうに首元のネックレスを弄った。
由貴は、ふうんと頷いて、納得するとくわえていたストローをグラスに入れて、勢いよく吸い込んだ。その後、ストローから口を離すとおもむろに手を伸ばして、テーブルの端にあるメニューを手に取った。
「何食おうかなー……『ジャンゴさんのジャンゴハンバーグ』か……なんかイラッとする名前だな」
「お前それ毎回言ってんじゃん」
「あー……お財布と相談だ」
メニューと睨めっこをしている由貴に、竜は視線を下に向けたまま淡々とツッコミを入れる。
「竜は?」
「今腹減ってねえし、いいわ」
「そ、」
竜の返事に頷くと、由貴はメニューに視線を戻した。
ドリンクバーセットで今なら半額!というキャンペーンに踊らされて結局ハンバーグを注文した由貴は、2杯目のメロンソーダをちびちびと飲んでいた。
「ここってさー経営大丈夫なんかねー」
「さあ」
以前来たときの賑わいが嘘のように、客数がまばらな店内を由貴はぐるりと見渡した。竜は大して興味もないのか、頬杖をついて外を見ていた。
カラン。
冷房のよく効いた店内でゆっくりと溶けたアイスコーヒーの氷が音を立てた。
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