8110人が本棚に入れています
本棚に追加
「……とにかく、学校に行って武内に話を聞くしかねえだろ」
「あ、ああ。そうだよな……」
竜の言葉に、由貴は手に持っていた本を棚へと戻した。由貴はしばらく黙って本棚を見つめた後、竜に視線を移す。その表情はいつものふざけたような気の抜けた顔ではなく、真剣な表情を竜に向けていた。
「なあ、竜。これで、もし武内が竜と阿部川の話を聞いてたってことだったら………武内が阿部川を殺した犯人ってことになんのか?」
「……百パーセントそうとは言い切れねえけど、そういう可能性は出てくるな。もしかしたら、聞いた話を他の誰かに言ったのかもしれねえし。どっちにしろ、昼休みの話を聞いてた奴が怪しいってのは変わりねえけどな」
「そう、だよな……」
竜は下を向いている由貴を一瞥した後、由貴の横を通ってコンビニから出た。横を通っていく竜を視線で追った後、由貴は溜息をひとつついてその後を追い掛け、コンビニを後にした。
可能性があるとはいえ、同じクラスの友人である武内陽介が犯人かもしれないとは思いたくはない。由貴は確認しなければいけない事実から目を逸らしたいような気持ちになっていた。
いつものような気だるそうな歩き方ではなく、先を急ぐように足を動かす竜の後を追い掛けながら由貴は眉をひそめ、下唇を噛んでいた。
最初のコメントを投稿しよう!