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「裏庭で事件があったあの日、たけ昼休みに図書室に行って『待ち人』って本借りてきてたよな?」
「え? あ、ああ。そうだけど、それがどうしたんだよ?」
「…………」
武内が不審げな視線を由貴に寄越すと、由貴は一度視線を斜め下に向けた後、視線を戻した。やはりあの日の昼休み、武内は図書室に行っていた。竜は由貴と武内のやり取りにじっと黙って耳を澄ませていた。
「……じゃあ、どうやって図書室で本借りたんだよ。あの日、あの時間、図書室に図書委員はいなかったはずだぜ」
「え? そうなのか?」
「そうなのかって、お前……図書室に本借りに行ったんじゃねえのかよ」
きょとんとした表情で逆に由貴に尋ねてきた武内に、由貴は脱力して胸倉を掴んでいた手を離すとずるずるとしゃがみこんだ。武内は由貴に掴まれたせいで、乱れた襟元とネクタイを直しながら、由貴を見下ろす。
「いや、まあ、確かに本を借りたことは借りたんだけど。俺はあの日、図書室に入ってねえんだよ」
「……は? どういうことだよ」
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