2品目 メロンソーダの呪い

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 7時を過ぎたころ、店内には竜と由貴、後は家族連れが一組、大学生くらいの男女が4人。自動ドアの動く機械音と共に他の客が入ってきたようだが、竜と由貴はドアのほうに視線を移すことない。竜は外に、由貴は先程竜が読んでいた雑誌に視線を向けていた。  ふと自分達のテーブルにさした影に気付くと、竜と由貴は顔をその影の方に向けた。 「……なんか用っすか?」  そこにはスーツ姿の男が二人立っていた。竜達を見下ろすように立っている男に竜が眉をひそめていると、40歳過ぎの男が口を開いた。 「君は藤嶋竜、かい?」 「は?」  竜は面識のない相手に突然名前を呼ばれたことに驚きながらも不愉快をあらわにさせていた。由貴は黙って二人の様子を見ていた。竜は男を睨みつけるように見上げる。 「……だったら何?」 「……」  竜の言葉に男は手をスーツの背広の中に入れると、何かを取り出して竜と由貴の前に突き出した。竜と由貴は少し身を前に乗り出し、目の前に差し出されたそれを見つめる。 「……警察、手帳?」  そこにはドラマなどでよく見る黒く小さな――――警察手帳があった。なぜ自分達が刑事に声を掛けられなければいけないのか、と自分達の置かれた状況が理解出来ていない二人を刑事は冷めた目で見下ろすと、ゆっくりと言葉を発した。 「藤嶋竜、浅田杏子(あさだきょうこ)殺害容疑で署までご同行願おうか」 「…………は?」  刑事の言葉に由貴は勢いよく顔を竜へと向ける。カラン、とグラスの中の氷が音を立てた。
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