17品目 解答用紙

5/11
8107人が本棚に入れています
本棚に追加
/119ページ
「な、何言ってんだよ? お前、自分が疑われてるからって人のせいにすんのかよ。最悪だな」 「人のせいも何も、お前以外いねえんだよ」 「なんでそんなことが言い切れんだよ。証拠でもあんのか?」 「ある。まあ……証拠っつーか、証言だけどな」  竜の言葉に久志は口を噤んだ。由貴は今までにないほど真剣な顔をして隣に座っている久志を見ていた。まるで一語一句聞き逃さないとでもいうように。黙りこんだ久志から竜は視線を逸らすと、ソファに背をもたれさせ、窓の外に視線を向けたまま話し始めた。  窓の外はやや薄暗くなり、大通り沿いにあるこのファミレスの前には下校途中の学生や、サラリーマンなど様々な人間が行き来していた。 「あの日の放課後、阿部川が裏庭に行ったのを知っているのは昼休みに図書室で待ち合わせの約束をした俺と俺が後で話した由貴。そして阿部川本人だけだと思ってた……武内の話を聞くまではな」 「!!」  竜の口から出てきた武内の名前に久志は手を握る力を強めた。竜は明らかに動揺している久志の様子を一瞥すると、また視線を窓の外へと向けた。 「昼休み、図書室に本を借りに来た武内は図書室の前にいた図書委員に自分の本の貸し出しを任せて、教室へと戻った。その図書委員が……お前だ久志」 「意味わかんねえ……図書委員が図書室の前に居て何がおかしいんだよ」 「だったら、なんで隠れた?」 「…………」 「昼休み、俺は図書室の中でも、行きも帰りもお前を見てねえ。まあ、行きや帰りに会わないのは俺より後を歩けば会うことのない話だし、帰りは図書室の中は見てねえし……けど、おかしいのはなんでお前は図書室の中に入らずに図書室の前で立ち止まってたんだよ」 「それは……」 「……図書室の隣の部屋で話してた竜と阿部川の話を聞いてたからじゃねえの」  竜の鋭い視線と言葉に久志が視線を逸らすと、隣で黙っていた由貴が真剣な顔をして口を開いた。その言葉に久志は一瞬驚いたように目を見開いたが、すぐに顔をしかめ、舌打ちをした。
/119ページ

最初のコメントを投稿しよう!