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「仮に聞いていたとして、どうやって俺が阿部川をやれるんだよ? 放課後、阿部川が裏庭に行ってから竜が行くまで誰も裏庭には行ってねえんだろ? それを見てた陸上部の奴が言いふらしてたぜ」
「誰も裏庭に行ってないのは、阿部川が裏庭に行った後の話だろ?」
「え……」
久志は少し早口でしゃべりながら、竜以外誰もあの裏庭には行っていない、自分にできるはずがない、と自信満々に言い切った。しかし、その言葉に竜はまったく表情を変えずに話を切り返した。
「6時間目はA、B組は体育だった。授業が終わった後、部活のやつらが来る前にそのまま教室には戻らずに裏庭で待ち伏せしてたらどうだ?」
「何言ってんだよ、体育ってことは俺は体操着……!」
「お前、あの日、A組の斎藤と一緒に見学して制服のままだっただろ。斎藤がお前と体育の時間、自分達もサッカーがしたいって愚痴ってたって言ってたぜ?」
「…………」
「……それで、阿部川が来た後、阿部川を刺して、俺が来るまで身を潜めていた。そして、人が集まって来た時にさも自分も今来たかのようにふるまったんだ。どうだよ、違うか?」
「な、なに言ってんだよ。俺はたまたま下校途中に寄っただけで」
「じゃあ、なんであの時、お前手ぶらだったんだよ。俺、見たんだ。裏庭で竜が教師に押さえつけられてんのをお前が見てたの……なあ、なんでだよ?」
「…………」
「お前、自分で言ってること矛盾してんのわかんねえ?」
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