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しゃべればしゃべるほどボロが出てくる久志に竜は呆れたような、同情しているような表情を見せた。由貴は唇を噛み締めて悔しそうな顔をしている久志を見た後、すぐに視線を逸らして顔をしかめた。
武内から久志の名前が出た瞬間、由貴は呆然とした。
佐川久志は由貴が高校に入ってから一番に友人になった人物でもあり、小学校から一緒の竜よりは友人である期間は短いものの、それでも自分のふざけた言動についてきてくれる大事な友人には変りなかったのだ。
しかし、その後の竜の推理を聞き、どう考えても久志が犯人であるとしか考えられなかった。なんでこんなことになっているのか。由貴はただ黙って床を見つめていた。
「それに、もう一つお前がやったって証拠がある。これは浅田の事件の方だけどな」
「……証拠?」
竜の言葉に久志は視線をあげた。竜はテーブルの上に置いてあるグラスを手にとり、グラスを揺らした。カランカラン。グラスの中に入っている氷が音を立てる。
「お前、由貴にB組の奴らから聞いた話だって、浅田が見つかった場所に俺のものが落ちてたって言ったよな? 俺が健太から聞いた話じゃ、B組の奴らが話してたのは放課後に来ていた刑事が教師に俺のことを聞いて回ってたって話だ。お前、なんでB組の奴らが言ってねえこと知ってるんだよ」
「それは武内が……」
「武内にも聞いたけど後者の話しか知らねえって。あのとき、あの場所に俺のものが落ちてるのを知ってんのは、警察と俺、由貴……そんで、犯人だけだ」
もう認めたらどうなんだよと竜は手に持っていたグラスをテーブルに置くと、俯いている久志を見た。由貴はソファに深く腰をかけて、横目で久志を見ていた。
しばらくの間、沈黙が続くと、ゆっくりと顔を上げた久志が小さく笑った。長めの前髪で隠れてはっきりと表情を見てとることは難しいが、その唇の端が片方だけ持ち上がっていた。
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