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「俺さ、ずっと浅田のこと好きだったんだ。中学んときから、ずっと……何度か振られてんだけどさ。男には興味ねえって。なのに……高校に入って竜を見た途端、あの女、竜のことを好きだなんていい出しやがった。1年のとき、同じクラスだった俺に間を取り持ってくれ、とか勝手なこと言ってさ……」
「…………」
「だからさ、最初はからかってやるつもりだったんだよ。ストーカー装って浅田を追い詰めた後、竜のふりをして近づいた。俺がアドレス教えたって言ったらすぐに信じてさー……バッカだよなあ。竜の名前を名乗ればラブホにも出てくるんだぜ?」
「同じクラスってのは、俺とじゃなくて、浅田と同じクラスってことだったんだな」
「ああ、阿部川には悪いとは思ったけど。たまたま同じ塾で、アイツがカンニングしてるとこ見て、それで浅田をやった後、他の奴には阿部川が竜にアドレスを教えたってことにしろって脅したわけ。まあ、結局、竜にばらそうとなんてするから、やっちゃったわけだけど」
まったく悪く思っていない久志の態度に由貴はまた掴みかかりそうになったが、両手を握って抑えた。竜は久志の言葉に眉を顰めた後、息をついた。
「あの写真は高田絵里を写さなかったのは、わざとか?」
「ああ、自分にできるだけ疑いがかからねえようにするためにな。怪しんだだろ、親友なのに一枚も映ってない。撮ったのはコイツなんじゃねえかって……竜のネックレスを盗んだのも、斎藤を階段から突き落としたのも、俺。後は、竜の推理の通り」
こんなに上手くいくとは思ってなかったけど、とおかしそうに笑う久志に竜は顔をしかめた。最初のおどおどと動揺していた様子や自分の知っている久志とはまったく違う雰囲気に竜も戸惑いを隠せなかった。
「えらく、あっさり認めんだな」
「まあな、これ以上足かいても無駄みてえだし。それに、竜、お前が十分苦しんでる姿見れたから満足なんだよ。いっつもすかした顔して、親が金持ちなのかしらねえけど、ふてぶてしい態度でさ、すっげえムカツク。お前といると、自分が駄目な奴だって思えてきて、苛々すんだよ」
「久志!!!」
我慢できなくなった由貴が左手で久志の胸倉を掴み、右手を握り締めて振りかざした。
しかし、その右手は後ろから何者かに掴まれ、久志へ振り下ろされることはなかった。
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