8107人が本棚に入れています
本棚に追加
/119ページ
「帰るか……」
「そうだねえー……」
竜は肩に鞄をかけ直すと歩き始めた。由貴は竜を一瞥した後、視線を足元へ向けて覇気のない返事を返すと、その後を追い掛けた。
辺りは暗くなり、歩道を歩く竜と由貴を照らしているのは擦れ違う車のライトだけであった。竜は由貴の少し前を黙ったまま、少し視線を下に向けて歩いている。由貴は擦れ違う車をぼんやりと見ながら歩き、たまに前にいる竜に視線を向けていた。
「なあ、竜」
「……なんだよ」
重い沈黙を破ったのは由貴であった。竜は振り返ることなく、淡々とした返事を返す。
「今からさー、ジャンゴ行かねえ?」
「……行かねえ」
「ですよねえー」
竜の返事に由貴はおどけたように笑いながら返すと、前を歩いていた竜が立ち止まって、振り返った。
「……一日に二回もファミレス行きたがるってどんだけ好きなんだよ」
「ファミレスは俺の聖地なの! 朝晩の祈りはかかさねえから」
「……バカじゃねえ」
由貴は竜の言葉に、バカですってー!とやたらテンション高く返すと、竜は呆れたような顔をした。由貴はいつも通りの竜の表情に、にんまりと笑いかけた。
「それにあそこは真のファミレスとは言わないんだよねー、由貴ちゃん的にはさ」
「なんでだよ」
由貴は自信満々に笑みを深めると、口を開いた。
「だって、あそこメロンソーダないんだもん」
「ジャンゴもたまにねえだろ」
「細かいことは気にすんな!」
最初のコメントを投稿しよう!