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「大人しく本当のこと言ったらどうだ?」
「だから、知らねえっつってんだろ」
知らないことを言えと言われても口に出せるわけがない。ファミレスで突然警察署への同行を求められたが、全く身に覚えのない竜は刑事を相手にしなかった。しかし、無理矢理刑事に腕を引かれ、連れて行かれそうになったため、このまま騒ぎになり悪目立ちするのはごめんだと、竜は取り敢えず大人しく二人に着いて行くことにした。
由貴はまさか竜が刑事と共にその場を離れると思っていなかったため狼狽したが、どうせすぐ戻れるだろと言った楽観的な竜の言葉に頷き、三人がファミレスを出ていくのをただじっと見ていた。
「嘘つくんじゃない!」
「嘘なんかついてねーよ」
「こっちにはお前がやったって証拠があるんだぞ!」
最初に警察手帳を見せた男、石崎は机に勢いよく手をついた。武骨な手のそばには、透明な小さなビニール袋の隣が置いてある。
竜がそのビニール袋に視線を向けると、そこには見覚えのありすぎる細身のチェーンに十字架のついた――金曜に無くしたはずのネックレスがあった。
刑事の話では、そのネックレスが殺害された浅田杏子のいた部屋に落ちていたということだった。
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