4品目 父と僕と運転手と

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「おい! 竜、大丈夫なのかよ!」  携帯を耳に当てて、通話ボタンを押した途端に飛び込んで来た声に竜は顔を顰めると、少し耳から携帯を離した。電波の向こう側にいる相手――由貴は、返事が無いことに慌てているのか、竜!竜!竜ってば!返事しろよ!と声を張り上げている。その声に呆れたような表情を浮かべた後、ゆっくりと口を開いた。 「うるせーよ。聞こえてるっつーの」 「聞こえてんならさっさと返事しろよー!……大丈夫なのかよ」 「ああ、大丈夫だって。もう警察出てるし」 「おま、だったら早く連絡しろよな!」  心配かけてんじゃないよ、と安心した声を出す由貴に竜は、悪かったよと謝った。 「で、今どこにいんの?」 「……家」 「……んなら、いいけど」  竜はちらりと横に座っている創司を一瞥し、すぐにまた視線を外に向ける。父親が自分を迎えに来て、今はその迎えの車に乗ってるとは言わなかった。  その間に通り過ぎた車がクラクションを鳴らしたため、竜が家にいない事をおそらく由貴はわかっていたはずだが、それ以上何も聞かなかった。少しの沈黙の後、由貴が口を開く。 「明日学校、来るよな?」 「行くけど……なんでそんなこと聞くんだよ」 「べえつに! 何となくだよ、深追いすんな!」  由貴はそう言い切ると、じゃーな!と一方的に通話を切った。竜は携帯を耳から話すと、溜息をひとつつき、ポケットにしまい込んだ。  速いスピードで通り過ぎていく夜景を眺めていると、ライトに照らされた赤色のファーストフード店の看板やジャンゴとは違う有名チェーン店のファミレスの看板が竜の目にとまった。 「(腹、減ったな…………)」  そういえば昼から何も食べてない、と空腹を感じたがこのまま家に帰っても自分の分の夕食は用意されてないだろう、と竜は夕食を食べることに見切りをつけた。溜息をついて頭を窓硝子にもたれさせると、ゆっくりと目蓋を閉じた。
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