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「モテる男は辛いねえ」
「うるせー」
由貴のからかうような言い方に竜は不機嫌そうに顔をしかめると、ポケットに両手を入れたまま歩く足を早めた。廊下には由貴と竜の二人分の足音が響いている。由貴はぺたんぺたんとややすり足気味に歩きながら視線を竜へと向けた。
「じゃあさ、今日どうすんの?」
「いつものとこでいいんじゃねえ」
「へいへい」
由貴は竜の意見に賛成すると、視線を竜からグラウンドで練習をしている野球部や陸上部の生徒らに移した。
ボールがバットに当たる独特な音や、掛け声がグラウンドに響いている。由貴はその様子に目を細めると、猫背気味の姿勢を正して、大きく息を吐いた。
「んー、まさに青春って感じじゃない? うらやましいねえ」
「ならまざってこいよ」
「えー嫌。ほら、俺って体育会系って感じじゃないし? アウトローだし?」
「意味わかんねえ」
うらやましいと言った割には即座に否定した由貴を竜は呆れた顔で振り返った。由貴はいたずらっ子のような笑みで、ニッと竜に笑いかける。
「スポーツはさ、たまにやるのが楽しんだって!」
「あっそ……」
もともと細い目をさらに細めて笑い、早く行こうぜ!腹減った!と言いながら意気揚々と駆けていく由貴の後ろ姿を竜は呆れたような表情で眺めた。
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