1品目 嵐の前触れ

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 桜ヶ丘高校から少し離れた場所にあるファミリーレストラン、ジャンゴ。  店内はすでにほぼ満席状態。家族連れなどの団体客がテーブルを占めており、あちらこちらから騒がしい声が上がっていた。  二人が店に着いた時、二人の指定席とも言える店の奥の四人席が運よく空いた。向かい合っているソファの左側に竜は腰をおろすと、持っていた雑誌を広げ始める。 「あーもう! んだよ! ツイてねー!」 「あ? なんだよ。っせえな」  飲み物を片手に不機嫌そうな表情で向かい側のソファに座った由貴に竜は視線を向けた。眉間に皺を寄せてブツブツ何やら文句を言っている由貴に、竜が何があったのか尋ねる。すると由貴は、聞いてくれよ!と持っていたグラスを竜の顔の前に勢いよく差し出した。ちゃぷん、とグラスの中で液体が揺れる。  グラスには、なみなみといかにも体に悪そうな青い液体が泡を立てて居座っていた。確かこれは、ハワイアンブルーとかいうジュースだとどうでもいいことを竜が考えていると、由貴は怒りをあらわに口を開いた。 「あいつらさあ! メロンソーダ品切れだからこれで我慢しろって! おかしくね!? メロンソーダの代役にブルーハワイアンとか無理じゃね!? ハワイブルーアンには荷が重過ぎるっつの!」 「ハワイアンブルー、な。呼び方統一しろ。鬱陶しい」  メロンソーダに対する冒涜だ!とやたら熱く語る由貴を竜は、お前の怒りの沸点がわからねえ……と呆れた表情でぼんやり見ていた。
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