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6月10日、月曜日。
梅雨の時期独特の体に纏わりつくような湿気の篭った空気が漂っていた。
日曜から今朝方まで降り続いた雨の影響でグラウンドの土は水気を含み、アスファルトは色を変えていた。
竜は放課後の誰も居ない教室で頬杖をついて教室の窓から外を眺めていると、後ろから肩を叩かれた。
「よ!」
振り返ると、そこには片手を上げてニッと笑っている由貴が立っていた。竜は関心の無さそうな顔で由貴を一瞥した後、また前を向いてしまう。
「あ、こら。シカトか!」
ひでえ、とヘラヘラ笑いながら由貴は竜がもたれている窓の近くの机に座った。沈黙。隣の教室から数人の話し声が聞こえている。由貴はその声になんとなく耳を傾けた後、竜を見上げた。
「……お前んとこのクラスのやつらしいじゃん」
「え?……あ、ああ、浅田のこと?」
突然話し始めた竜に由貴はついていけず、つり目がちの目を丸くする。その後、竜の言葉に何か考えるようなそぶりをして、思い当たったことを問い掛けた。その問い掛けに竜が頷くと、そうだよーとやたら間延びした声を出しながら由貴は伸びをするように両手を挙げて、天井を仰いだ。
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