死神の子

11/11
前へ
/573ページ
次へ
「ところでお前、名はなんという?」 「な?」 「名前だ」 黒髪の男は、振り返るとそう聞いた。 「………………」 「なんだ。名前すら付けてもらえなかったのか」 「ッ…………」 「安心しろ。俺が付けてやる」 「本当!?」 「あぁ。お前の目と髪には癒しのオーラがある」 「癒し?」 「そうだ。………癒羅…だな。癒羅がいい。お前にピッタリだ」 「ゆら……?」 「お前の名だ。今日からお前は癒羅だ」 「癒羅……癒羅!」 「気に入ったか?」 「うん!!」 まさか、名前を付けてもらえるなんて…… もう、あの子とか、お前とか言われなくても済むんだ…… 本当に優しいお兄ちゃんだな。 癒羅は嬉しかった。 名前を付けられた事によって、自分の存在を認めてもらったような気がしたから。 「お兄ちゃんは?」 「?」 「お兄ちゃんの名前はなんて言うの?」 「俺の名か?俺はサタンだ」 「サタン……いいな、カッコいい」 「そうか?」 サタンは癒羅の反応を見ると、ふっと口元を緩ませた。 「さぁ、家に案内する」 ヒョイっと癒羅を片手で持ち上げると、フワッと体が浮き上がった。 「うわっ」 「大丈夫だ。しっかり掴まってろよ」 再び微笑むと、癒羅を抱えたまま、屋敷へと向かった。
/573ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3502人が本棚に入れています
本棚に追加