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ところで、冷蔵庫の中の手紙だが。
どうしよう。きっと今頃、良い具合に冷えてるんだろうけど。
「あんた勉強しなさいよ。あんたが国公立大学か難関私立にでも進学してくれたらあたしの株が上がるから」
「なんで俺がお前の株上げなきゃいけないんだよ。てゆーか、何しに来たんだよ」
そう言うと、紗英はいきなり真剣な目を向けてきた。
「聞くけど、大森君ってわかる?クラスの」
大森……たしか、クラスではいつも一人で行動してる奴だ。誰とも深く関わろうとせず、声をかけても『ん……』とか『ああ……』とか一言しか返事してこない奴だ。
一匹狼って感じで、なんだか連れない奴。
「わかるよ。大森がどうかしたの?」
「実は先週、大森君が一人で教室に残ってたの。何してるのって聞いたら、『別に』って。気になったからその後、大森君の後を付けてみた」
「ストーカー」
「うっさい、本当に変な雰囲気だったんだから。そしたらね、繁華街の所のホストクラブに入って行って。あの子、もしかしてそういう仕事してるわけ?担任教師としては見過ごせないんだけど、そういうの」
ああ、その相談でわざわざ来たのか。
「知らねぇよ。あいつ、なーんにも話さないし」
「役立たず」
紗英はそう吐き捨てて家から出て行った。
しかし意外だ。大森がホストか。確かに、あいつならホストくらいできる顔してるけど。
あいつが女を口説いてるとこなんて想像つかない。
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