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鏡の前に立ってみた。こうして見ると、俺がいかに日本人らしい顔立ちなのかわかる。手元には、例のカラコン。
「さて……」
思わず一人で呟いてしまう。指先にカラコンを乗せ、一つ息を吸ってみた。
正直、怖い。なんたって得体の知れない物体だ。
「はあ……」
ざわざわと全身に緊張がはしる。
ああ、怖い。
でも、僕にはもっと怖いものがある。例えばそれは竜が死ぬこと、紗英がこの世からいなくなること。
そんな不安が、少なからず心の奥底にある。
だって、大森は死んだから。何の前兆も無く、死んだから。
それに、あの手紙とこの事件はどうにも関係があるような気がする。共通しているのは"どちらも不気味"ということだけ。なのに、あの手紙は訴えかけてくるんだ。
"お前の不安、俺の言う通りにすれば何かわかるかもしれないぞ"って。
目を見開く。
その薄黒い目に、俺はカラコンを乗せた。
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