黒手紙

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瞬間に、全身の筋が、細胞という細胞が、反応を示した。まるで電流がはしったような、そんな感じ。   気持ちいい。   力がみなぎる。動きたくてたまらない。走りたい。飛びたい。   そのときだった。   『うるせえ!静かにしろ!』   「は?」   何者かが話しかけてきたのだ。 辺りを見回しても誰もいない。ここは自宅の洗面所なのだから当然だ。しかし、確かに声は聞こえた。   『見たってわかるわけないだろ!俺は、お前なんだから!』   ますますわけがわからない。 俺?話しかけているのは、俺なのか?   『そうだよ!俺は、お前だ!もう一人のお前だ!』   よくわからないが、コンタクトを付けた瞬間に"俺"を名乗る何かが目覚めたのは確かだ。   「誰……?」   『まだわかんねぇのか!俺はお前なんだよ!覚醒した、完全体のお前だ!』   「意味わかんない」   『ああ、めんどくせぇな!くそ!カラコンの効果から説明しなきゃなんねぇのか!』   頼んだわけでもないのに、"俺"は勝手に説明を始めた。   『いいか!カラコンにはな、お前の六感及び筋力を強化する能力が備わっている!そして俺は、お前の第六感だ!世間じゃ直感とか呼ばれてるあれだ!』   驚いた。第六感って聞いたことはあるけど、話しかけてくるものなんだ。   『おい!勘違いするな!俺はカラコンによって強制的に呼び覚まされたからこうなっただけだ!お前が何でカラコンを装着することができるか、わかるか?俺がいるからだ!お前の第六感が、つまり俺が、他人のそれとは比べ物にならないくらい優れているからだ!感謝しろ!』   意味わからん。 けど、いつの間にか俺の心は落ち着いていた。
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