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匂いを追う内に、どんどん狭い路地裏に入っていく。地元に住んでても通ることのないような場所だ。暗くて、じめじめしてて。
匂いはどんどん濃くなっていく。
そして俺は辿り着いた。
「これは……」
そこにあるのは少しの血の跡。ほんの少しだけど、かすれたようなうっすらとした跡が確かにある。
触ってみると、微妙に温かいことがわかった。発達した触覚が無ければ感じとれないほど、うっすらと。
この血の跡は拭き取られた跡だ。ということは、これは人による仕業。そしてまだ新しい。
近い。
血以外の匂いを必死に嗅ぎ取ると、下水道に繋がっていることがわかった。
マンホールを開け、中に入る。
近い。
そして、気が付いた。
人の吐息が聞こえる。
「だ、誰だ?」
低い声。こちらこそ問いたい。一体、誰だ?
暗いけど、カラコンを付けている今の視覚なら見える。
そこにいたのは、手に死体をぶら下げている黒髪の青年だった。20歳前後といったところだろうか。黒渕の眼鏡をかけていて、痩せ細っている。
「見つけた……」
ついに、見つけた。
『あいつ……!なんか嫌な感じがするぞ!』
丁度、俺もそう思っていたところだ。いや、そうか。頭の中の声も俺だから……ああ、ややこしい!
「お、お前、なんでわかったんだ?」
「今はそんなこと言ってる場合じゃないだろ」
ぶら下げている血だらけの人が、少女だということがわかる。
「その娘に何をした!」
青年は焦って逃げようとするが、遅い。
「逃がさねぇぞオラァ!」
思いきり殴りかかったが、拳は空を切っただけだった。
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