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「く、くそ!お、お前も殺してやる!」
吐息が少女のものだということがわかる。まだ生きている。
青年はナイフで切りかかってきた。ギリギリで見切ったが、結構なスピードだ。強化された肉体でもこんなに避けるのが辛いなんて。
何かがおかしい。
「今度はこっちの番だ!」
避けた瞬間に相手の横腹にミドルキック。綺麗に決まった。
「あが……」
「大人しくしろ!」
「そ、そうか……。お前、その目は……」
青年が何か言っているような気がしたが、途中で口ごもった。
「ち、ちくしょう。こんなに早く2代目が見つかるなんて、話が違う……。あ、相手が悪いな。ちくしょう!」
青年は少女を下水道に投げ、そのまま走って逃げた。
俺は少女が落下する前にジャンプして拾い、壁を蹴って地に足を付けた。
青年は完全に逃げたようだ。足音すら聞こえない。
それより、今は少女の命が先だ。
「大丈夫か!しっかりしろ!」
まだ生きている。
体温もあるし、息もある。呼吸もだんだん整ってきたし、傷もだんだん消えて……あれ?
傷が無い。いや、さっきまでは確かにあった。それなのに、消えたのだ。
少女の服にべっとりと付いた血が、確かに先程までそこに傷があったことを証明している。
「作戦失敗です……」
終いには残念そうに一言。
何がどうなっているんだ?
「なあ、あんた……」
少女は目を見開いてこちらを見てきた。
青い。
「あなたのせいで、全部失敗です!」
そして、俺のことを力いっぱい殴った。
なんだ、こいつ?
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