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下水道を出て、とりあえず家に向かった。少女はひたすら辺りを見回している。
「佐藤さんは、この辺りは初めて?」
「はい。だって、ずっと研究所にいたから」
また、少女は落ち込んだ。
「事情はわからないけどさ、とりあえず俺の家に行こう」
俺は無理矢理少女を抱えた。俗に言うお姫様だっこというやつだ。
「ちょっと、何するんですか!降ろしてください!」
「こうした方が速いだろ?
暴れる少女を必死に抱え、全力で走る。次第に、少女は暴れるのを止めて一言呟いた。
「あなたは……本当にシャドウそっくりね。まったく同じことをする」
そう言って微笑んだ少女の頬にはえくぼができた。世間一般的には可愛い顔立ちをしている。二重でぱっちりした目、高い鼻。茶髪のショートヘアで、肌は光のように白い。
「どうか、しました?」
「なんでもないよ」
思わず顔を反らしてしまった俺は今、どんな表情をしているのだろう。
なるべく速く、尚且つ人に見つからないように走った。走って走って、ようやく見えてきた俺の家。ほっと一息付いて、少女を降ろした。
「なあ、カラコン外したいんだけどさ。これってやっぱりケースとかで保存した方がいいの?」
「当たり前ですよ。使い捨てじゃないんですよ、これは」
少女はポケットからケースを取り出した。
「これは予備だけど……あなたにあげます」
「ありがとう」
受け取ると、そのケースが意外と重いことに気付いた。
「金属……?」
「はい、カラコンは専用のこのケースと、専用の液の中に入れて保存しなきゃいけません。ドラッグストアで売ってるような洗浄液とはわけが違いますから」
話しながら歩いていると、ようやく家に着いた。
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