橙空朝

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まだ完全に明るいわけではない空。   その中を必死に、汗だくになって走る少年。   俺。   「はあ、はあ」   やっば。体力きついわ。   早くバス停へ行かなきゃ。もうすぐそこだ。   朦朧(もうろう)とする意識を必死に保ちながら、曲がり角を右へ。   「嘘じゃん!」   思わず声に出てしまった。バスが来ている。   ばっかやろう、お前、20分に一本のくせに。なんで定時より3分も早く来てんだよ。   「待ってください!」   プシュー。   ドアがスライド式の新しいバスだ。   いや、そんなことはどうでもいい。   今まさにその最新式のスライドドアが閉まったところだ。   「乗ります!」   大きく叫ぶ。   止まれよ。止まれよ!   しかし。   その願い虚しく、バスは俺を嘲笑うかのように発車した。   ははは、少年よ。哀れだな。   俺に乗ろうなんざ100年早い。   「はあ、はあ」   今日はついてないな。   ちくしょう。
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