249人が本棚に入れています
本棚に追加
まだ完全に明るいわけではない空。
その中を必死に、汗だくになって走る少年。
俺。
「はあ、はあ」
やっば。体力きついわ。
早くバス停へ行かなきゃ。もうすぐそこだ。
朦朧(もうろう)とする意識を必死に保ちながら、曲がり角を右へ。
「嘘じゃん!」
思わず声に出てしまった。バスが来ている。
ばっかやろう、お前、20分に一本のくせに。なんで定時より3分も早く来てんだよ。
「待ってください!」
プシュー。
ドアがスライド式の新しいバスだ。
いや、そんなことはどうでもいい。
今まさにその最新式のスライドドアが閉まったところだ。
「乗ります!」
大きく叫ぶ。
止まれよ。止まれよ!
しかし。
その願い虚しく、バスは俺を嘲笑うかのように発車した。
ははは、少年よ。哀れだな。
俺に乗ろうなんざ100年早い。
「はあ、はあ」
今日はついてないな。
ちくしょう。
最初のコメントを投稿しよう!