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「…獅子頭。貴方が言うのであれば、私は従いましょう…ただ―…」
少しくもった顔を見せた天狗に、獅子は『ガハハっ!』と笑うと、誇った顔で続けた。
『天狗よ…。この腐れきった世界を変えたいとは思わんか?今こそ 妖である我々の出番なのだ。人間達だけが世を支配してはいけない。昔の様に、我々も地に降りようではないか!思い知らせてやろうではないか!百鬼夜行だ!!』
高々に笑う獅子を見て
「はっ」
と頷く天狗の顔はやっぱりどこか納得できない感が見受けられる。
とても冷たい風が吹いた。冷めた人間達の心の様な風は、天狗の頬を撫でると小さな木の葉を天に巻き上げた。
『天狗よ!!天狗!お主の“言の葉”だけじゃ。同志の封印を解いてくれ。…そして、世界を変えようじゃないか!!ガァハハハ!』
「…獅子…頼む。一つ聞かせてくれるか?」
真顔に戻った獅子は『何だ?』と厳しい顔を天狗に向けた。
「二つの世界の調整を唯一許され、人間達を守ってきた私だから聞きたい。
今の人間は、確にどこか虚しさを感じる。しかし…世界は…人間達にとって 良い方に変わるか?封印を解く事で、私の今までの苦労は 一層報われるか?」
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