第一章

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「お父さん,すぐに戻るって言ったのに…。」 もう朝になった。 あれからずっと,ローズはその場を動かずに父親を待っていた。 いつまで待っても父親は帰ってこない。 父親を探しに行こうとも思ったが,真っ暗な森は見るのも恐ろしく,動けば父親にもう会えないような気がして,ローズは泣きながら一夜をその場でじっと過ごしたのである。 そんなローズに朝日がそそぎ,ローズは顔を上げた。 明るい森は,夜ほど怖くない。 お父さんはわたしを探して迷っているのかもしれない。 このまま待っているだけではなくて,わたしもお父さんを探そう。 ローズは涙を拭って立ち上がり,駆け出した。 父親の背中が小さくなっていった,あの方向に向かって…。
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