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ピタリとそれを手首に触れると首筋にヒヤリとした感覚が、一瞬電気が走る様に伝わる。
銀色に鈍く輝くそれを、静かに肌に沈める様に差し込み、一気に切る。
ポチ…ポチ…
血液の赤い球が肌に現れる。
何度も、何度も、力を段々込めて、そうしていく。
ツイーと、肌を赤い血の筋が滴り落ちる。
前の傷は綺麗に避けて、新しい傷をこしらえていく作業に意味なんかない。
ただ、血が見たいだけ。
ただ、生きている証拠が見たいだけ。
†††
こんな作業は端から見たら完全に異常だろう。
異常者の狂った儀式。
少なくとも、「健常者」と世間から呼ばれる人間には、アタシの事なんか「頭オカシイ」とか「親から貰った身体に」とかしか思われないのは紛れもない事実であり、現実。
アタシはそんな「健常者」に普通に見られたいとか、そんな事は考えてない。
ただ切って気持ちを落ち着かせたいだけ。
でないと爆発してキレちゃうから。
アタシは毎日気持ちが揺れる度に剃刀を手に握る。
血が流れてるのを見てる瞬間は最高にエクスタシィであり、ホッとする。
そう、アタシは狂ってる。
†††
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