夜明け

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「マスター、攻撃命令を」 今にも飛び出さんとしていた彼女が突然、光志郎に何かを求めるように振り向いた。彼は意味の解らないままとっさに応える。 「お…あ…ま、任せた」 こくっ、と彼女は頷くと、そのまま右手下段に構え直し、ぐっと踏み込んだ。 そして一気に跳躍。 速い! 光志郎はそう呟く。そしてそれは黒い少女から見ても同じ事だった。 「ふん…そう来なくては、な!」 しかしその表情に、先ほどまでの余裕は全く無い。 それは、ただひたすら回避行動を行うべきだった。あるいは即撤退という選択肢もあったのだろう。 しかし彼女は自分の愛剣で、とっさに防御姿勢を取る。それが愚行だと分かりつつも―。 意外にも、決着は一瞬の内についた。 ツインテールの少女の、鎌のようにも見える閃光刃が黒い少女の剣を両断し、更にその先の、彼女の左腕の肩関節部をも斬り落としたのである。 「くっ!?」 中破した黒い少女は、その場から元いた窓際へと飛び退く。 「まさか…これほどとはな。報告するには十分過ぎる。そろそろ退き時か」 そう言うなり、彼女は塀や壁を伝って外へと消えた。image=129807959.jpg
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