廻り始めた運命という名の歯車(後編)

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しかしフェンリルの姿は、既にその射程内には無かった。 ヴァッフェは 「25秒…」 というフェンリルの声が聞こえたのと、ズドンと身体に重い衝撃を受けたのを最後に、意識を失いその場に崩れた。 「バトルオーバー!!勝者、太子 アキラ!!」 篠原のジャッジが下る。 馬鹿な! と、ステージ上のオーナースペースでメイヤーが唸っている。 「き、貴様らァ…!一体何をした!何が起こったと言うんだ!!」 「なぁに、簡単な事サ。アンタの可愛いウサギちゃんが怯んでる隙に、フェンリルが一瞬で間合いを詰めて後ろを取った。ただそれだけだ」 アキラは自慢げに(むしろ清々しい表情で)言い返す。 ただそれだけ。 アキラは簡単に言うが、それは決して簡単な事では無い筈だ。相手の行動を全て予測出来た上での戦術。最後の一撃に全てを託す、だからこその30秒。 そして一撃限りで的確に相手の急所を捉えた彼女。 半日でそこまでコンビネーションを取れるとは…恐るべしアキラ、そしてフェンリル…。 光志郎は、親友の恐ろしいまでの適応力を改めて実感した。
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