‡第一部‡ 出逢い

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意識が海底から引き揚げられるような感覚に襲われながら、彼は目を覚ました。 ……朝か。 まだ意識がハッキリしていないものの、器用に腕を枕元に伸ばして時計を掴む。 現在時刻は8時半。 「…今日は土曜だし、もう少し寝ていたいな」 そう呟きながらもう一度ベットに潜り込もうとする。 しかしそれを遮ったのは、どこからか立ち上る美味しそうな香りと、ドアをノックする音、そしてそれと同時に聞こえた少女の声だった。 「光志郎兄さん 朝ご飯、作っておきましたから」 “光志郎兄さん”と呼ばれた彼は お、おぅ… と応える。 彼の名は、雨宮 光志郎という。 父親はおらず、母親は海外に出張している為、実家に居ながらにして独り暮らしの状態を続けていた。 そしてこの少女は如月 美波。 光志郎の隣人なのだが、彼の面倒をみて欲しいと、光志郎の母、幾子から合い鍵を貰っていたりする。 どうやら面倒見の良い彼女は、その申し出を拒否するどころか、今朝もこうして朝食をこしらえたという訳だ。 「それじゃあ、私はこれから部活ですので」 「美波、いつもすまないな。わざわざ朝食まで支度してもらって」 そして光志郎は、 別に俺一人でも と、付け加えようと
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