この橋、渡る可からず

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「お嬢さん、お嬢さん!!」 次に声を掛けてくれたのは知らないおじいさんでした。 私は意識を失い、橋の終わりで倒れていました。 霧は薄くなり、いつの間にかカナエさんも消えていました。 なにより永遠に続くかと思われた橋も、終わりがあったのです。 「よかった…」 悪夢は終わりました。 「どうしたんだね、お嬢さん…」 私は、信じてもらえるはずはなくとも、おじいさんに昨夜の出来事を話しました。 「…カナエさんか…また出たんだね…」 「また…?」 「この橋にはね、昔から、出るんだよ。皆、逃げられなくて死んじゃうんだけどねー…よく生きてたね」 私は不思議に思いました。 何故このおじいさんはこんなにも冷静なのか、そして、どうしてこんな話を信じるのか。 そこまで考えて私はふと横に目をやりました。 霧が完全に晴れ、周りがよく見えるようになったのです。 驚愕しました。そこには別の橋が向こう側まで続き、先が見えないのです。 一つではなく、沢山の橋が、悪意を込めて立ちはだかり、私の死を望んでいるのです。 「可哀相にねぇ…次はわしから逃げるんだよ。可哀相にねぇ…」 それはそれは楽しそうに、悪意の笑顔を私に向けました。
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