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この橋、渡る可からず
もう、お酒は飲まないと、誓いました。
橋のうえ
あれは私が二十歳になりたてだったころ…私は友達と飲みに行きました。
初めて居酒屋で飲むお酒がおいしくて際限なく飲み続け…
「リサーもう飲むの止めなよ~」
友達のカオルが私を止めました。だけど私はそれを振り切り飲み続けたんです。あの時、何故そんなにも飲んでしまったのか、今となっては、もう判りません。
「今日は朝まで飲むわよ!!」
記憶は、そこまでです。
次に気がつくと、そこは橋の上で、私は濃霧の中を歩いていました。周りは全く見えません。ただ足元と手が届く範囲が見えるくらいです。
「それでさー…って、聞いてる?大丈夫?」
ふと声を掛けられました。隣には見知らぬ女性が。カオルではありませんでした。
「えっと…どなたでしたっけ?」
私は恐る恐る聞きました。女性はびっくりして、
「覚えてないの?居酒屋で泥酔してるあんたに声掛けたら付き合えって言ってここまで連れてこられたんだけど…改めて、私、カナエ」
何だか記憶にあるような気がして私はカナエさんにひとまず謝りました。
「いいの、いいの。酔っ払いは仕方ない!とりあえず橋、渡ろっか?」
私はうなづきました。
いい人そうで良かったと思いました。
しばらく歩いていたのですが全く端が見えず、霧は濃くなる一方だしで、徐々に不安になりました。
次第にカナエさんの姿もおぼろになり、よく見えなくなりました。
そもそも、私、本当にカナエなんて人と逢ったのでしょうか?
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