3人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
春麗(はるうらら)。
桜が咲き誇り鶯(うぐいす)が鳴く頃、俺こと岩倉 翔太[いわくら しょうた]は只呆然と小さな駅のホームに立ち尽くしているのでありました。
無人のホーム。
目の前には線路にフェンス、広がる田んぼ。
ホームにあるのは自販機と長椅子が1つ、そして券売機。
拝啓、母上様。
此処は何処なのでしょうか。
眩しい日差しを浴びながら若干現実逃避仕掛けの脳味噌、何故こんな事になったのだろうかと少し記憶を遡ってみる。
あれは昨日の事―…
春休みも残り数日という日、残り僅かというページ数の本を居間でゴロゴロしながら読んでいる時の事だった。
いつもなら夜中まで帰って来る事のない母親、それがなんと夕方に帰宅した。
しかも料理なんてしている。
料理は出来るがめったに作らないあの母が!!
この時点で気づけたなら、とも思うが結果は一緒だろう。
それでも少しは心の準備が出来たかもしれない。
この時俺は珍しい、明日は槍でも降るんじゃないか、くらいにしか取らなかった。
そして夕食後、事件は起きた。
俺が食後のお茶をずるずる音をさせながらすすっていると、コーヒーを飲みながら母は言った。
「あんた明日からお姉(伯母)んとこね」
.
最初のコメントを投稿しよう!