第1話

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春麗(はるうらら)。 桜が咲き誇り鶯(うぐいす)が鳴く頃、俺こと岩倉 翔太[いわくら しょうた]は只呆然と小さな駅のホームに立ち尽くしているのでありました。 無人のホーム。 目の前には線路にフェンス、広がる田んぼ。 ホームにあるのは自販機と長椅子が1つ、そして券売機。 拝啓、母上様。 此処は何処なのでしょうか。 眩しい日差しを浴びながら若干現実逃避仕掛けの脳味噌、何故こんな事になったのだろうかと少し記憶を遡ってみる。 あれは昨日の事―… 春休みも残り数日という日、残り僅かというページ数の本を居間でゴロゴロしながら読んでいる時の事だった。 いつもなら夜中まで帰って来る事のない母親、それがなんと夕方に帰宅した。 しかも料理なんてしている。 料理は出来るがめったに作らないあの母が!! この時点で気づけたなら、とも思うが結果は一緒だろう。 それでも少しは心の準備が出来たかもしれない。 この時俺は珍しい、明日は槍でも降るんじゃないか、くらいにしか取らなかった。 そして夕食後、事件は起きた。 俺が食後のお茶をずるずる音をさせながらすすっていると、コーヒーを飲みながら母は言った。 「あんた明日からお姉(伯母)んとこね」 .
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