携帯電話

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ある日悠の働くお店にアルバイトの男の子が入った。色白で細身のお洒落な感じのする男の子だなあ。悠の第一印象はそんな感じだった。厨房に入った彼は口数も少なく黙々と仕事をこなしていた。 体育会系の多いこのみせの男性陣からは珍しいタイプに映った。 「おい、加藤いつものように今回も新入りの歓迎会してやってくれ」 「あっそっかあ。はあい。分かりました。場所はステラでいいですよね?店長。」 「そうだな。頼むよ」 悠はこのお店の中でも中堅になってきて最近では新人の歓迎会の幹事は毎回悠だ。もともとお金勘定が得意なことと世話好きもあってこの役回りも嫌いではない。 「柏木くん。今週の日曜の夜空いてる?」 日にちを確定するために主役の予定をきかねば。しかし彼は何故だか戸惑っている。 「空いて…ます…」 「じゃあ歓迎会をその日にするね。」 わたしのその言葉に顔を真っ赤にした彼。 「?どうしたの?顔があかいよ。」 「いやっ…加藤さんにデートにさそわれたかとおもっちゃって…」 「ぷっ それであかくなったの?」 「はい…」彼とこんな風に話をしたのは初めてだった。照れている彼は意外と人懐っこい笑顔をしていた。 その笑顔に思わずドキッとしてしまった悠はあわてて彼の携帯アドレスを聞くことにした。 「あっ 僕じつは携帯もってないんです」 「えっ?」 今どきそんな人いるの?思わず口に出しそうだったがやめておいた。 しかしどうやって連絡をとるんだろう?ほんの15年ほど前は当たり前だったことがわからないことに悠自身が驚いた。 「家の電話に連絡ください。なんか携帯って簡単に連絡とれるのも嫌で。友達には嫌がられてますけど半ば意地になってますね。すみません。」 変わった人だな。話をしてみて改めて実感した。
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