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この女は遊女… しかもその中でも、最高の遊女とされる「おいらん」となれば、男との密会など許されない。 人に見つかったのは初めてだった。 「おいらん。昨晩どこへ行っておった?ここは出る事の許されない場所。わかっておるよなぁ?」 『何の事でありんしょう?昨晩はここにいましたえ。』 「ごまかしても無駄や。今日役所の人に聞いたわ。 おまえさん客と逢引しとったそうやな?これがどういう事か…わかるか?」 『それはっ!!………申し訳ありやせん。もう二度と逢引などいたしやせん。』 「当然や!!本当なら今すぐ見世から追い出すところやわ。 でも今おまえさんを出したら、こっちの身が持たへん。二度とこないな事をしないと誓ってや!!」 『誓いやす。同じ過ちは………もうしない。』 そうしないと あの人を守れない………… おいらんは心の中で誓った… もうあの人に 逢うてはいかん……… その日から徐々に、おいらんへの監視は強まり、二人で会う時間は無くなってしまった。
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