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見渡す限りの水平線
雲一つ無い空
揺れる地面
彼女はその地面…船の甲板の手すりから海を眺めていた
彼女の名は『凛』、ここより遥か東の国から見聞を広める為に旅をしている者だ
黒い髪を頭の上で束ね、瞳の色は黒く、そして黒く染められた、東方の島国独特の民族衣装を着ている
一見すると黒一色である。しかし彼女の肌は純白に近いほど白く、黒と白が絶妙なコントラストを描いていた。
彼女は手すりに寄り掛かりながら、ぼーっと水平線を見ていた。時折水が跳ねる音がする。その度に彼女は水面に視線をずらし、音がした場所を見つめる。
何故?と誰かが聞けば彼女はきっとこう答えるだろう。
「する事が無いから。」
実際彼女は暇を持て余していた。船での旅は客である限りは特に仕事は無い。何人かでの旅なら、話やゲームでもして退屈を凌げる。だが彼女は一人旅。それらで退屈は凌げないし、見知らぬ人に話かけるのも苦手だったからだ。
彼女が船に乗って既に10日程経過していた。退屈もそろそろ限界だ…、彼女がそう思った時、何処からか鳥の鳴き声が聞こえた。彼女は慌てて鳴き声がした方を向く。
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