記憶の追憶(Ⅰ)

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六年前… 「……」 学校の帰り道、千代は川の傍の土手下で一人、ぽつんと座っていた。 (貴…) これは千代と貴が事故に遭ってから二ヶ月後である。季節は夏の初夏である。千代は平たい石を掴んでは投げるが石は一度も跳ねずに川のそこに沈む。 (貴…怪我、まだ治ってないのかな?) 千代は事故以来、貴の入院している病院には行っていなかった。夕焼けが視界に映る全てを赤く染めている。 (帰ろう…) 千代はズボンに付いた砂などを掃い落とし、土手の上に上っていった。 すぐ近くの氷橋(すがばし)を通り、商店街の方へ足を向けた。此処の商店街は道が長いが、千代が家に帰るには、此処を通った方が早い。 千代は人にぶつからないように、人の合間を縫っていった。商店街の出口を出ようとした… その時… スッ… 千代の横を貴が通り過ぎた。 「貴っ!?」 千代はその瞬間を見逃さなかった。千代はすぐに振り返った…が 「ちょっと!!いきなり振り返らないでよ!!」 千代の真後ろにいた、買い物袋を持ったおばさんにぶつかった。 「ご、ごめんなさい。」 千代は一礼してそのおばさんの横を抜けていった。 「貴…貴っ!!」 千代は貴の名前を呼びながら商店街を走って行く。だが返事などは全くない。 ついに千代は商店街の入口まで戻って来てしまった。 「貴…」 千代はそのあとも貴を捜したが見つかることはなかった。  
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