記憶の追憶(Ⅰ)

4/18
前へ
/122ページ
次へ
千代の家… 「ただいま」 千代が家に帰ったのはもう暗くなった頃だった。千代の顔も暗くなっている。 「千代っ!!遊ぶのはいいけど、もっと早く帰って来なさい!!」 千代の母は軽く怒っていた。 「うん…ごめんなさい。」 千代の耳にはほとんど届いていないようだ。千代は階段を上り、自分の部屋に入っていった。 「まだ悩んでんのかな?千代は…」 母ははぁーとため息をつきながらキッチンに戻った。 自室… 千代は自室でベッドに腰掛け、枕を抱き抱えながら、物思いに耽っていた。 (あの時、いたのはホントに貴だったのかな?…もしかしたら違う人だったかもしれない。でも…) 千代はもうなにがなんだかわからなくなっていた。学校では勉強も手につかず、体育の授業でサッカーをやるとき、サッカーボールがいつも、顔面に当たっている。そのせいで顔は生傷だらけである。 (ああっ、もう、なんで貴のことだけでこんなに悩まなくちゃいけないのよ。) 千代は抱き抱えていた枕を壁に投げ付けた。枕の壁に当たる音が部屋に小さく響いた。 (もう悩むのも、めんどくさくなった。明日、貴ん家に行こう。) 千代が決意を固めた時… コンコンッ…
/122ページ

最初のコメントを投稿しよう!

199人が本棚に入れています
本棚に追加