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と、思ってた。
いや、思いもしなかったよ。
うん。
思いもしなかった。
「す~ー、す~ー」
帰り道に通る公園の、
くすんで色もわからないベンチの上。
「…むに…、すぅー~」
小さく上下する肩と胸。
「…寝てる…」
体は背もたれのほうを向いていて、
顔は見えないが小柄な女の子だ。
…って今、夜の10時だぞ!?
やばいだろ!?
「お、おい!
こんなとこで寝てると危ねぇぞ!?」
肩を揺すってみた。
返事はない。
ただの屍のようだ。
…んなはずあるかっ!!
「もう夜は寒いんだぞ!?」
起きそうにない。
だけど女の子は、
「…む~ー…」
少しだけ煩わしそうに寝返りを打った。
「……アレ?」
思わず声に出るくらい、
どこかで見た顔がそこにありました。
「……………………吹島かおり?」
んがヴァあっ!
「うぁっ!?」
吹島(?)が勢いよく起き上がった。
「………………あ?」
「いや、あ?でなくて。
って吹島、よだれよだれ」
ああ、吹島だ。吹島だった。
よだれ垂らしてやがる女の子は、
確かに吹島だ。
彼女はよだれを拭った。
なんだかぼーっとしているが、
毎度ことなので寝ぼけてる訳じゃない。
…と思う。
イマイチ掴めないヤツだ。
「…んで?
なんでこんなとこにいんだよ?」
ツッコミどころは満載だが、
とりあえずはそこから聞いてみた。
が。
「…さあ、ウチは知らないな」
失敗。
何がしたいんだ、吹島かおり!
「とこっで、
なしてここにカズゥがおるの?」
「こっちが聞きたいわ!」
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