そして君は歩き出す。

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更にさんざん言い合って、 日付が変わったくらいの時間に帰った。 結局、吹島は送っていったよ。 僕らがいた公園からたった数十mだけど。 ちょっと助かったんだよな。 家にいるのは嫌いだ。 あの家には帰りたくない。 あの家にいる誰の声も聞きたくない。 今日は特に。 だから吹島に感謝した。 …少しだけ。 じゃないとちょっと癪なんだ。 家に着いたけど、 中に入る気が起きなかった。 玄関の前で煙草を取り出し、火を点けた。 オレンジっぽい火が紙を焼き、 煙を上げて灰になってった。 家にはもう、灯なんて点いてなかった。 吸い終わってから扉を開けた。 僕の嫌いなハコの、扉を。 逃げるように自分の部屋に駆け込んだ。 風呂は散歩の前に入ったから、 そのままベッドにダイヴ。 数分もしないうちに意識は消えた。
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