ボク

2/3
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
ボクは、気づいたら3丁目に住んでいた。小さい時から3丁目だったんだ。 だから3丁目の事は誰よりもよく知ってる。この抜け道は海まで行く近道だとか、美味しい木の実がなる場所だとか、ボクしか知らない緑に囲まれた秘密の場所だとか…。他にもたくさん知ってるよ。 今日も色んな所を行ったり来たりする。 もちろん、3丁目が好き。 のんびり自由に歩いてると、 3丁目に住んでいる人たちに 出会う。 みんなボクを見掛けると 撫でてくれるし、 遊んでくれるし、 ご飯もオヤツもくれる。 お昼寝だって一緒にする。 みんな優しくて大好きなんだ。 嫌いな人なんていないよ。 あ、でも最近1人だけ、 ボクを見掛けると捕まえようと 追いかけてくる 女の子がいるんだよね。 まぁ、ボクのが足は早いし、 塀や木の上に登って 逃げてたりするんだけど。 まったく…、いったいボクが何をしたってゆーんだよ。 だけどさ、その追いかけっこ でさえ楽しいの。 離れすぎたら止まって 待っててあげたりするし。 ボクって優しいでしょ? あとね、よくボクは みんなの話し相手になるんだ。 悩みだって聞いてあげる。 人間って沢山 悩みを抱えてるんだね。 ボクなんて、 明日雨だったら嫌だな とか 毛玉が気になるとか、そのくらい。 でもボクは 言葉を話すことが出来ないから、返事を返すことができない。 ただ寄り添う事しかできない。 それがね、 寂しく感じる時があるんだ。 でもたまに悩み解決の 手伝いをしたりするの。 そうするとみんな 笑顔になってくれる。 少しでも 支えになれてたら嬉しいな。 必要とされてることは ちょっと嬉しい。  
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!