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「……きろ」
「……?」
誰かの声が耳に届く…
「…起きろ」
「……ふぁ?」
「早く起きろ!遅刻するぞ!」
「わああああっ!!」
少年は慌ててソファーから跳び起きた。しかしバランスを崩し床へと落下する。
「ぎゃあっ!」
間抜けな声が朝のリビング響く。
決して自分がドジなわけではない。自分の寝ている場所がいつものベッドではなくリビングのソファーだったからであり、そのため床までの高さが予想に反して近く、つんのめってコケてしまったのであって、決して言い訳をしているのではない。朝から素晴らしく無駄な言い訳を思考する少年であった。
しかし今の彼にはそのような言い訳をする時間はない。
「…ってもうこんな時間!?」
彼は慌てて起き上がり台所へと足を運んだ。
「だから言ってるだろ、遅刻するって」
奥のキッチンから、お世辞にも似合っているとは言えない薄ピンク色のエプロンをした中年の男が言う。
「早く着替えてこい。今日は俺の旨い朝飯は抜きだな…」
「ごめんなさい。小父<おじ>さん…」
少年は謝るのもほどほどに二階へと階段を駆け上がる。制服に着替えるためだ。彼は慣れた手つきでネクタイを締め、胸元でキラリと光る中学の校章のついたブレザーを羽織りながら階段を駆け降りた。
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