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朝の教室は騒がしいさの中にもどんよりとした空気が残っていた。担任の先生はまだ来ておらず、着席している生徒もまばらだ。そんな普段と変わらないクラスを見た晴彦は小さなため息を漏らし自分の席に座る。そして机に頭を委<ゆだ>ねささやかな休息を味わおうとした。しかし乱れた呼吸がそれを許さず、心臓の激しい鼓動も安眠を妨げた。
「疲れた……」
晴彦は小さな愚痴をこぼす。
「ようハル。今日は遅かったな。寝坊でもしたのか?」
頭上から典型的かつ的確な質問が投げかけられ、晴彦は重い頭を上げた。そしてぶっきらぼうに声の主へと言い返す。
「だったら何だっていうんだよ、ユウ」
「お前が朝からご機嫌ななめとは……今日は雨でも降るんじゃないか?勘弁してくれよ、俺今日傘持ってきてねぇし」
彼は一人で勝手に話を進め、にかっと笑った。晴彦はのっそりと身体を起こし、ため息混じりに答える。
「そりゃあ僕だって人間なんだから気分を損ねる日があってもいいだろ?」
「………そうだな」
「何だよ、その間は?」
「何のことだ?俺は無実だ」
「どうせくだらないボケでも考えてたんだろ?」
「………」
図星を突かれ、黙り通すことしかできないクラスメートだった。
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