chapter1

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「ん?」 麻那の言葉にゆっくり振り向き。 「大変だけど、楽しいから」 いつも答えは一緒、弱音を吐いてるのを見たことがない。 仕事は、 「楽しい」 「歌うのが好き」 「嬉しい」 「ダンスが好き」 レイジからは汚い言葉は出てこない。 アイドルのレイジも今のレイジも同じ。 人って多少なりとも裏があると思う。 嫉妬、憎悪、エゴ、何かはひそめてるはずなのに、レイジには見当たらない。 昔から変わらず、さらりと飄々とまるで風のよう。 捕まえようとしても、きっとすり抜けてしまう。 掴み所がない。 麻那はそう感じていた。 「私、レイジの弱音聞いたことない」 思わず本音がでる。 「言わないもん」 またあの小悪魔のような笑顔。 「ぜってー麻那には言わない」 「なんでー?幼なじみなのに!」 絶対と麻那にはと言うところに不満を感じながら、身を乗り出す。 「あぶないっつーの!」 レイジの声も大きくなる。 慌ててお互い人差し指を口に当てて、静かにの合図。 「・・・男が女の前で弱音吐いたら格好わるいデショ」 声のトーンを下げてレイジが言う。 「じゃあどこで弱音はくの?」 他に女の人がいて、その人に癒してもらってるとか? 「弱音を食べてダンスしてるの!仕事がストレス解消、俺ってエコでしょ」 仕事が一番なんだ。 レイジの言葉を聞いて改めて思う。
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