2.二つの失恋

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すき、という言葉の意味が、『好き』だという事にやっと気づいた僕は。 正直、先程まで自分が落ち込んでいた原因の事もすっかり忘れ。 相手の方を見つめた。 未だ、頬を赤く染めたままの彼女は、不安げな顔をしていたけれど、その瞳は、どこか真剣で、何かをやり遂げたような雰囲気を持っていて。 僕は、自分が今、知ってはいけない事を知ってしまった事に気づいた。 それでも、もうどうする事も出来ないという事にも同時に気づいてしまった。 僕は、今まで『好き』という言葉をこんなにも意識した事はなかった。 誰かを、『好き』だと思う気持ちや。 異性を意識する気持ちに、多分、今までは、顔を逸らして生きてきたのだ。 でも、もう、それが許されない事だという事を、僕は知ってしまう。 だって、今、クラスメイトの彼女が言ってきた、好きという言葉が。 『好き』という意味を持っているのだと気づいた、その時。 僕の頭に真っ先に浮かんだのは、今目の前にいる彼女ではなく。 いつも登下校を共にする、あの、幼馴染の女の子だったからだ。 「そっか」 僕の口からは、それしか出てこなかった。 あの日、彼女が僕の事を嫌いじゃないと言った時に、呟いた言葉と同じだと僕は思った。 それでも、あの日のような、どこか清清しい気持ちなんてどこにもなくて。 ただ、その言葉は、僕に苦しさと寂しさだけを与えて去っていった。 僕は結局、クラスメイトの告白の返事を返さなかった。 寂しそうに去っていくあの子の後姿を見送る事もせず、また、黒板を眺める作業へと戻った。 緑色のそれは、ところどころ消しきれなかったチョークの跡で汚れていて、とてもみすぼらしく、見ていて、楽しいものでもなんでもなかった。 それでも、見つめ続ける事しか僕には出来なかった。 そう、僕は、気づいてしまったのだ。 本当は、僕は幼馴染である彼女の事が好きだったという事に。 そして、彼女に『好き』と伝える勇気が、今の僕には存在しない事に。
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