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委員会の、一つ年上の先輩に。
いちいち話す事でもないと思うんだけど、念のため、××君には言っておこうと思って。
あのね、
私、その告白、
OKしようかと思ってるんだけど…
小さく紡がれる言葉の数々を耳に入れる僕の頭は、思ったよりも冷静だった。
そっか、告白されたんだ。
そっか。
それはきっと、彼女に他の誰かが、『好き』と伝えたという事だろう。
僕が、この16年間、一度も言う事が出来なかった『好き』を、その人は勇気を出して彼女に伝えたのだろう。
それは、とても凄い事だ。
僕は、そっと、その人の事を尊敬する。
彼女は、もう何も喋らなかった。
僕も何も言えなかった。
数分の時間が過ぎ、いつものように、いつもと同じ時間に、駅に、電車がやってくる。
僕達を目的地まで運んでくれるそれに乗り込んでからも、僕らは無言だった。
何を言えばいいのか、何を話せばいいのか、僕にはさっぱり分からず。
ただただ、隣に座っている一人の女の子の方を見ないように、窓の外をじっと見つめていた。
「そっか」
結局、僕が発した言葉は、電車から降りる時に言った、それだけだった。
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