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「ねぇ、お兄さん。何してるの?」
「本当だ、何してるの?」
公園のベンチに座り、項垂れていたら上からかかってきた声。
顔をあげてみたら、小さな影が二つ、俺の前に立っていた。
一人は赤い鞄を背負い、一人は黒い鞄を背負っている。
頭に被っている黄色い帽子から、俺は相手がまだ生まれて10年もたっていない子供だという事実に気づき、慌てて笑みを浮かべた。
だけどやっぱり、慌てて笑うという行為は、どちらかというと逆効果らしい。
結局、俺の顔は、不恰好な奇妙な笑いしか作れなくて。
目の前にいる影達に、不安げな表情をさせてしまう結果になってしまう。
困ったな。
子供を困らせてしまっている。
それは、子供好きな自分にとっては、とても心苦しい事だ。
せめて、何か会話をしよう。
そこでようやく気づいてしまった。
毎日をぼんやりと生きてきた俺には、最近子供の間で流行っているアニメも漫画も、歌も。
何一つ分からないのだ。
自分が今まで、いかに周りを見ていなかったか。
自分が今まで、いかに、世界を見ていなかったか。
その証明が、今こんな形でされてしまっている。
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