0.二人

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「ねぇ、お兄さん。何してるの?」 「本当だ、何してるの?」 公園のベンチに座り、項垂れていたら上からかかってきた声。 顔をあげてみたら、小さな影が二つ、俺の前に立っていた。 一人は赤い鞄を背負い、一人は黒い鞄を背負っている。 頭に被っている黄色い帽子から、俺は相手がまだ生まれて10年もたっていない子供だという事実に気づき、慌てて笑みを浮かべた。 だけどやっぱり、慌てて笑うという行為は、どちらかというと逆効果らしい。 結局、俺の顔は、不恰好な奇妙な笑いしか作れなくて。 目の前にいる影達に、不安げな表情をさせてしまう結果になってしまう。 困ったな。 子供を困らせてしまっている。 それは、子供好きな自分にとっては、とても心苦しい事だ。 せめて、何か会話をしよう。 そこでようやく気づいてしまった。 毎日をぼんやりと生きてきた俺には、最近子供の間で流行っているアニメも漫画も、歌も。 何一つ分からないのだ。 自分が今まで、いかに周りを見ていなかったか。 自分が今まで、いかに、世界を見ていなかったか。 その証明が、今こんな形でされてしまっている。
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