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話は最初に戻る。
僕達は、お互いが幼馴染だという事実をたまに忘れる。
まるで、他人のように、何も知らない他人のように接するお互いが嫌になってきたのは、僕も彼女も同じだった。
痺れをきらしたのは、僕。
つい、口から出した言葉は。
「もう、いいよ」
小学校一年の時。
友達のいなかった僕に、友達になってくれと、僕の母親が大学時代の同級生だったらしい彼女の母親に頼んだのが、僕達の出会いだった。
最初は、親がわざわざ人に頼んでまで僕に友達を作らせようとしたというのが、妙に悔しくて恥ずかしくて。
不安で不満で仕方なかったのに。
次の日、僕の前に現れた女の子が、あまりにも可愛い顔をして笑うものだから。
僕はすぐに、彼女に夢中になってしまったのだ。
友達のいない僕に。
付き合ってくれる、優しい女の子。
それが他でもない、僕の幼馴染の女の子。
彼女は今まで、僕の傍にい続けてくれた。
僕の親の頼みを律儀に守って。
僕に新しく友達が出来ても、それでも友達をやめようとはせずに。
僕に、幼馴染という素敵な存在を与えてくれた。
でも、もういいよ。
もう、いいんだ。
もう、僕なんかに構わなくていいんだよ。
君には僕以外に友達もいるし。
僕にも、君以外に友達がいる。
もう、僕の友達でいてくれなくてもいいんだよ。
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